日本の漫画やアニメにおいて、外国人がどのように描かれているのかについて、関心を持つ外国人は多いと思います(私もそうです)。美術の専門家でなければ、西洋人の一般的な描き方とどこが違うのかについて正確に表現できないかもしれません。しかし、見ているうちに、何かが違う、今は日本人の目を通して外国人を見ているのだと意識させる何かを感じることがあります。
もちろん、この現象は漫画とアニメに限りません。開化期(19世紀後半)の美術の中でも、独特な外国人描写を見ることができます。今回は、特に1860年代の「横浜絵」に注目したいと思います。
「横浜絵」はどういう絵なのでしょうか。神奈川県立図書館のデジタルアーカイブを引用させていただきます。
安政6年(1859)の開港によって、戸数100戸ほどの一寒村であった横浜は、またたく間に外国の人々や船が出入りする貿易都市に生まれ変わりました。異国情緒溢れる新開地横浜は世の中の話題になり、新奇好きな浮世絵の格好の題材となりました。江戸にあった浮世絵板元(出版元)は大勢の絵師たちを横浜に送り込み、新鮮な驚きと好奇心に満ちた絵師たちの目を通して黒船や港の風景、新開地横浜の繁栄ぶり、外国人とその珍しい風俗・習慣を次々と描かせていきました。
明治に入ると日本は西欧化政策によって大きな変容を遂げます。西欧の制度や文明開化の風俗が人びとの関心の的になっていきます。浮世絵も、横浜裁判所や時計台等の洋風建築、横浜・新橋間に開通した鉄道、鉄材の橋や馬車など新しい題材を得て活気づき、絵師たちは開化のシンボルともいえる蒸気車を競って描きました。
このように開港期から維新期にかけて横浜のエキゾチックな風俗を描いた浮世絵は「横浜絵」と呼ばれています。「横浜浮世絵」や「横浜錦絵」、「江戸和蘭絵」の呼び方もあります。また、明治期の新世相・新風俗を伝えた浮世絵は総称して「開化絵」と呼ばれています。「横浜絵」・「開化絵」は浮世絵の一分野ですが、これらの作品は、当時の横浜を伝える写真ジャーナリズムともいえる貴重な歴史的資料になっています。(「横浜絵」「開化絵」とは…?)
ここで、オンライン展示の幾つかをご紹介したいと思います。これらの美術宝を観ながら、描かれている方々のストーリー、彼らを注意深く見つめている絵師たちのストーリー、また、それぞれのシーンの背後にあるストーリーを想像してみると、いっそう面白くなるでしょう。
日本語(または二ヶ国語)での展示・リンク集
「浮世絵-開化絵と横浜絵」リンク集(京都外国語大学)
英語での展示・リンク集
「Amerikajin」(アメリカ議会図書館)
Japanese Depictions of North Americans (1860s)(The Public Domain Review)
他の展示
横浜絵ではありませんが、「西洋の発明家、学者、芸術家などの苦労話のエピソード」を描いた錦絵もご覧ください。(一つ目のサイトは日本語で、二つ目のサイトは英語で紹介しています。)
泰西偉人伝(筑波大学)
Japanese Prints of Western Inventors, Artists and Scholars (1873)(The Public Domain Review)