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イントロダクション
“Practice makes perfect,” 「練習によって完璧が生まれる」とよく言われますが、but not necessarily. 必ずしもそうではありません。完璧が生まれない練習方法もあります。 それでは、どのように練習したらエキスパートになるのでしょうか。 この問いを持って、長年研究してきた心理学者がいます。フロリダ州立大学の教授であり、熟達・専門知識・expertiseについての指導的研究者として知られている K. Anders Ericsson(K. アンダース・エリクソン)という方です。 今月のNautilusという科学誌で、エリクソン教授は『サイエンス』や『ネーチャー』という有名な科学誌で勤めてきたロバート・プール氏の協力を得て、より効果的な練習方法について書いています。 “Not All Practice Makes Perfect: Moving from naive to purposeful practice can dramatically increase performance”、すべての練習は完璧をもたらしません。単純でナイーヴな練習をやめて、目的のある練習をすることで、成果は劇的に向上するだろう、という記事です。 ここでは、記事を引用しながら、鍵となるいくつかのキー・ポイントを記しておきますが、時間があれば、記事全体を読んでみてください。たくさんの面白いストーリーを通して、エリクソン教授の研究結果が分かりやすく説明されています(ただ、結構長いので、まずはザッと目を通してみるといいかも知れません)。
エリクソン教授の研究目的
Why do some people learn faster than others? その答えが知りたくて、エリクソン教授はあらゆる実験をしてきました。
I have found that no matter what field you study, music or sports or chess or something else, the most effective types of practice all follow the same set of general principles.
. . . imagine what might be possible with efforts that are inspired and directed by a clear scientific understanding of the best ways to build expertise.
何かをマスターしようとした時に、科学的により効果的であると証明された方法があるならば、それを採用したいですね。
The Usual Approach・普段の練習方法
ただ何かができるようになりたいのであれば、普通に練習すればいいかも知れません。しかし、人並みにできるようになったところで、上達がストップしてしまう。どんなに練習しても、なかなかそれ以上に上手くならない。そのような経験はありませんか。
Research has shown that, generally speaking, once a person reaches that level of “acceptable” performance and automaticity, the additional years of “practice” don’t lead to improvement. If anything, the doctor or the teacher or the driver who’s been at it for 20 years is likely to be a bit worse than the one who’s been doing it for only five, and the reason is that these automated abilities gradually deteriorate in the absence of deliberate efforts to improve.
ここでのキーフレーズは“in the absence of deliberate efforts to improve”です。高い意識をもって練習しないと、上手くならないどころか、せっかく身につけたスキルが衰えていくことすらあります。それでは、意図的練習(deliberate practice)とはどのような練習なのでしょうか。
Purposeful Practice・目的のある練習
あまり考えずに、とにかく繰り返し繰り返し練習していく人はいますが、無意識的な反復だけではだめだ、とエリクソン博士が証明しています。 “Deliberate practice”が必要です。 “Purposeful practice”が必要です。 英語では “deliberate practice” や “purposeful practice” という表現が使われることが多いのですが、ちょっと検索してみたら、日本語では様々な表現に意訳、または直訳されています。例えば、「意図的練習」「熟慮された練習」「思慮深い練習」「計画的な練習」「よく考えられた練習」「注意深く組み立てられた練習」「慎重に計画された練習」「合理的で構造的な練習」等々。 何れにしても、言語であれ、スポーツであれ、芸術であれ、何かを覚えようとしても、何かをマスターしようとしても、以下のことをしないと、上達が停滞してしまい、そのうち、逆戻りしてしまうことになるでしょう。 1. Purposeful practice has well-defined, specific goals. 目的のある練習には、明確で具体的な目標が設定されています。
Purposeful practice is all about putting a bunch of baby steps together to reach a longer-term goal. . . . The key thing is to take that general goal—get better—and turn it into something specific that you can work on with a realistic expectation of improvement.
「もっと上手くなりたい」「もっと上手になりたい」だけではダメですね。具体的に考える必要があります。いつまでに、何ができていたいのか。抽象的で壮大な目標よりも、図ることのできる「赤ちゃんの一歩」の方がいいですね。 2. Purposeful practice is focused. 目的のある練習とは、集中しているときであります。
You seldom improve much without giving the task your full attention.
当たり前のように思うかも知れませんが、気がつけば、別のことを考えながら練習することも多くありませんか。毎回の練習が「フロー体験」(flow experience)にならなくてもいいでしょうが、本当に上達することが目的であるならば、集中のない練習にはあまり意味がないようです。 3. Purposeful practice involves feedback. 目的のある練習とは、フィードバックを含みます。 まずは「フィードバック」の意味ですが、この説明をご覧ください(マーケティング中心の定義ですが、分りやすいと思います)。
フィードバックは、顧客とのよい関係を構築するために、極めて重要な用語になる。一般的に、フィードバックは、結果に応じて原因を調整すること(社会・心理)、あるいは単に反応、感想、意見の意味がある。マーケティングの世界では、レスポンスを得た消費者に対し(見込み客)、メッセージをどのように受け取ったか、どんな環境で受け取ったか、受け取った態度や気分はどうだったかの情報を収集することをいう。つまり、マーケティング・アクションに対し、どのように感じたか(結果)を把握するために調査し、マーケティング・アクションにその調査結果を利用し、修正していく必要がある。
マーケティングの世界のみならず、今のレベルを超えて上達したいのであれば、フィードバックは欠かせないとのことです。
Generally speaking, no matter what you’re trying to do, you need feedback to identify exactly where and how you are falling short. Without feedback—either from yourself or from outside observers—you cannot figure out what you need to improve on or how close you are to achieving your goals.
4. Purposeful practice requires getting out of one’s comfort zone. 目的のある練習には、自分の安全地帯から足を踏み出す必要があります。 言い方を変えるならば、to move outside of one’s comfort zoneとは、居心地の良い場所、快適帯、安心領域から抜け出すことです。
This is perhaps the most important part of purposeful practice.
「目的のある練習」の最も大事な要素であるかも知れません。
Getting out of your comfort zone means trying to do something that you couldn’t do before. Sometimes you may find it relatively easy to accomplish that new thing, and then you keep pushing on. But sometimes you run into something that stops you cold and it seems like you’ll never be able to do it. Finding ways around these barriers is one of the hidden keys to purposeful practice. Generally the solution is not “try harder” but rather “try differently.”
自分の安全地帯から出るということは、必ずしも自分を苦しめて、辛い思いばかりをしてしまうということではありません。むしろ、バリア(障壁、障害物)を乗り越えるために創造的に視点を変え、新しいことを学ぶ喜びにもつながります。 しかし、やはり、自分だけでは難しい場合が多いので、
The best way to get past any barrier is to come at it from a different direction, which is one reason it is useful to work with a teacher or coach. Someone who is already familiar with the sorts of obstacles you’re likely to encounter can suggest ways to overcome them.
皆様にはそのような方いますか。いなければ、じゃ、どのようにして「助ける人がいない」「良き助言をしてくれる人がいない」というバリアを乗り越えることができるかについても創造的に考えてください。
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以上がこの記事のキーポイントではないかと思います。しかし、面白い話や具体例がたくさん出てきますので、時間が許すならば、今度は全部英語で “Not All Practice Makes Perfect: Moving from naive to purposeful practice can dramatically increase performance” を読んでみてください。
エリクソン教授の研究が参考にされている次の本を英語で読みましたが、日本語版もあるので、両方のリンクを載せておきます。どうぞ、ご覧ください。
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ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由
ジョシュア・フォア (著), 梶浦真美 (翻訳)